(住込み浪人[その39]の続き)
「(アイツらあ……)」
OK牧場大学の学生食堂でカレー・ライスをひと匙分だけ残し、スプーンを宙に持ったままとなっていた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、足の付け根に置いていたスプーンを持っていない方の手を机の上にあげ、眉間に皺を寄せた。
「(ふん!『テイトー』に落ちてOK牧場に来たってことか、ふふ)」
今度は、薄ら笑いを浮かべた。
「でもさあ、やっぱり、『レッド・ブラッド・アーチ(Red Blood Arch)』より『ユー・ゲート(Unidentified Gate=「U-Gate」)』の方がいいモンな」
「なんだよ、『モン』って、それ、シャレか?」
二人の男子学生は、帝立大学東京とOK牧場大学それぞれを代表する『門』について話していたのだ。
「だってよお、『レッド・ブラッド』だなんて、『ナムアミーダ・ザ・ブッチャケ』みたいじゃん」
『ナムアミーダ・ザ・ブッチャケ』は、有名な凶悪レスラーだ。凶器攻撃を仕掛け、相手も自分も血まみれになるのだ。
「そうだよな。『U-Gate』の方が、謎めいて神秘的だもんなあ」
二人の男子学生は、最後のひと匙分だけカレー・ライスを残したままの『住込み浪人』の眼光に射抜かれていることに気付かないでいた。
(続く)
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