(住込み浪人[その16]の続き)
「なにい!たかが、『たい焼き』だとお!『たい焼き』を侮ると、今度もまた、ハンカチ大学に受からないぞ!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、友人エヴァンジェリスト氏に恫喝された。東京メトロポリタン大学のすぐ近くのエヴァンジェリスト氏の下宿に遊びに来ていた時のことであった。
「馬鹿云え!ハンカチ大学の入試に、『たい焼き』の数え方なんて、出やしない!」
「そういう問題ではないぞ。入試に出るなんて、云ってはいない。常識の問題だ」
「『たい焼き』の数え方に常識があるのか?」
「あるとも。『枚』と数えるんだ。『たい焼き』屋で『6個』なんて注文したら、笑われるぞ」
「君が買っているアソコの店だけだろ、『枚』と数えるのは。ひょっとして、『6個』と云って注文して怒られたことがあるのか?」
エヴァンジェリスト氏が、『たい焼き』を買う店は、私鉄の『メトロポリタン大学』駅から下宿までの間にあった。
「うっ!」
「ははーん。図星だな。そもそも、何故、『枚』と数えるのだ。『個』でもいいだろうし、『たい焼き』を『魚』だとするなら、『尾』であろうぞ」
「ううっ!」
「ハハハハハ!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、指圧で有名な『ナメコシ・トクサブロー』ばりに高らかに笑った。
(続く)
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