(住込み浪人[その36]の続き)
「(え!........?)」
OK牧場大学の学生食堂でカレー・ライスをひと匙分だけ残した『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、カメムシの解説をしていた男子学生と眼が合ったのであった。
「(.....ボ、ボ、ボクか?!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、スプーンを宙に持ったまま、眼を見開いていると、男子学生は、何か言葉を発するように唇を動かした。
「ふん、スミローか。臭いの、そのジャージだなあ」
男子学生の言葉は聞こえなかったが、そう云っているように思えた。
「(いや、違う、違うんだ!これは、ジャージじゃない。パジャマだ…..まあ、もう何週間も、いや何ヶ月も洗ってはいないが……)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の声は、心の中であったが、小さくなっていった。
「(臭いのか?....そんなに臭いのか?....ボ、ボ、ボクは…..)」
若い『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、後に、彼の体臭に何人もの女性が狂うようになることを、その時は、まだ知らなかった。
「要するにさあ、オレ、『官立』の奴にはヘドが出るのさ」
カメムシの解説をしていた男子学生は既に、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年からは視線を外し、もう一人の男子学生に話しかけていた。
「だけど、『サトミツ』は、オレ、好きだなあ」
(続く)
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