2019年3月22日金曜日

住込み浪人[その33]







「あーいよお!」

オバチャンは、OK牧場大学の学生食堂のカレー・コーナーから自分の名前を呼ぶ声の方に振り向き、返事した。

「(『サキ』って云うのか)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年のそんな心中の言葉を、オバチャンは逃さない。

「そうだよ。咲くって漢字一文字で『咲』(サキ)さ。スミローちゃん、いいんだよ、『サキ』って呼び捨てにしても、ふふ」
「(いや、遠慮する)」
「じゃ、アタシ、行くよ」

と、オバチャンは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に背を向け、カレー・コーナーの方に戻って行った。

「(んぐっ!しまった!)

そうだ、オバチャンのことなんか、どうでもいいのに、心の中ではそう思っているのに、『体』が自身の意志に反し、勝手な反応をするのだ。

「(ヤメてくれえ!)」

と思いながらも、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の眼は、プリップリッと左右に揺れるオバチャンのお尻を追っていた。



「ふふ」

オバチャンが振り向き、ウインクした。


(続く)



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