(住込み浪人[その32]の続き)
「あーいよお!」
オバチャンは、OK牧場大学の学生食堂のカレー・コーナーから自分の名前を呼ぶ声の方に振り向き、返事した。
「(『サキ』って云うのか)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年のそんな心中の言葉を、オバチャンは逃さない。
「そうだよ。咲くって漢字一文字で『咲』(サキ)さ。スミローちゃん、いいんだよ、『サキ』って呼び捨てにしても、ふふ」
「(いや、遠慮する)」
「じゃ、アタシ、行くよ」
と、オバチャンは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に背を向け、カレー・コーナーの方に戻って行った。
「(んぐっ!しまった!)
そうだ、オバチャンのことなんか、どうでもいいのに、心の中ではそう思っているのに、『体』が自身の意志に反し、勝手な反応をするのだ。
「(ヤメてくれえ!)」
と思いながらも、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の眼は、プリップリッと左右に揺れるオバチャンのお尻を追っていた。
「ふふ」
オバチャンが振り向き、ウインクした。
(続く)
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