2019年3月25日月曜日

住込み浪人[その36]







「アイツら、カメムシをどうして『椿象』と書くのかも知ってるんだけどさ」

OK牧場大学の学生食堂でカレー・ライスをほぼ『こさげ』た『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の耳は、近くの席で、現役の『テイトー』(帝立大学東京)学生が数人出演し、芸能人とクイズで対決する番組『テイトー王』を語る二人の男子学生の会話を拾っていたが、眼は、食堂内の女子学生たちの脚を追っていた。

「どうしてなんだ?」
「中国にさ、『香椿』と書く『チャンチン』って臭い木があるんだってさ。カメムシって臭いだろ。だから、『香椿』の『椿』を使ってるみたいだ」
「『象』は何さ?」
「文字通り、『象』(ゾウ)さ。口先が、象の鼻みたいだってことらしい」



「へえ、『テイトー』の奴ら、そんなこと知ってるのか」
「だからなんだって云うんだ。カメムシを『椿象』と書くことを知らなくたって全然、おかしくないぜ。それを、早押しで答えて、その由来まで滔々と説明するなんて、俺には恥ずかしくてできないな」
「まあ、恥ずかしい以前に、カメムシを『椿象』と書くなんて知らないから、答えることも説明することもできなんだろ」
「まあな。だけど、カメムシが臭いことは知ってるぜ」
「ああ、アレは臭い!」
「ん?.....」
「どうした?」
「ん….臭くないか?何だか、カメムシみたいに臭くないか?」
「ええ?そうかあ…..」

と、二人のOK牧場大学生は、学食内を見渡し、カメムシの解説をした学生の方が、一瞬、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年と眼を合せた。

「(んんん?)」


(続く)



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