(住込み浪人[その24]の続き)
「(なんだろう?)」
OK牧場大学の学生食堂のテーブルに、ポーク・カレーを載せたトレイを置き、椅子に座った『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、トレイの上の半分に折られた紙を見ていた。
「(クーポンだろうか?)」
と、思いながら、学食のカレー担当のオバチャンがくれた紙を取り、開いた。
「え!?」
と声を出したので、近くのテーブルに座っていた男子学生が、顔を向けた。
「ふん、スミローか」
また、侮蔑的な言葉を吐かれてしまったが、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、紙に書かれた文字に気を取られ、男子学生が吐いた言葉は聞こえていなかった。
「(…..これは….)」
そう、それは、電話番号であった。
「(オバチャン、どういうつもりだ?)」
と心中に疑問の声を発しながらも、オバチャンの意図が明らかであることを理解はしていた。
「オバチャンがアッタメてあげようか?」
オバチャンが、カウンター越しに掛けてきたあの声が、その紙からこ聞こえてくるような気がした。
「(ぶるっ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、またもや、身震いした。
「…….」
その時、初めて、近くのテーブルに座っていた男子学生が、自分の方を、紙切れを持って、それをじっと見ている自分を見ていることに気付いた。
(続く)
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