2019年3月14日木曜日

住込み浪人[その25]







「(なんだろう?)」

OK牧場大学の学生食堂のテーブルに、ポーク・カレーを載せたトレイを置き、椅子に座った『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、トレイの上の半分に折られた紙を見ていた。

「(クーポンだろうか?)」

と、思いながら、学食のカレー担当のオバチャンがくれた紙を取り、開いた。

「え!?」

と声を出したので、近くのテーブルに座っていた男子学生が、顔を向けた。

「ふん、スミローか」

また、侮蔑的な言葉を吐かれてしまったが、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、紙に書かれた文字に気を取られ、男子学生が吐いた言葉は聞こえていなかった。

「(…..これは….)」

そう、それは、電話番号であった。



「(オバチャン、どういうつもりだ?)」

と心中に疑問の声を発しながらも、オバチャンの意図が明らかであることを理解はしていた。

「オバチャンがアッタメてあげようか?」

オバチャンが、カウンター越しに掛けてきたあの声が、その紙からこ聞こえてくるような気がした。

「(ぶるっ!)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、またもや、身震いした。

「…….」

その時、初めて、近くのテーブルに座っていた男子学生が、自分の方を、紙切れを持って、それをじっと見ている自分を見ていることに気付いた。


(続く)


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