2019年10月11日金曜日

ハブテン少年[その57]




『少年』は、東洋工業(現在のマツダ)の設計技師であった父親は真面目な人で、家に帰っても数学の本を取り出し勉強する姿を見ていたものの、でも家が裕福になった訳ではなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「どうじゃ、楽しいか?」

1968年、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)1年生であるエヴァンジェリスト少年のクラスの男子生徒たちに、体育のパンヤ先生が、問いかけた。

「はーい!」

そこは、校庭のバスケットボールのコートであった。1学期、1学期は、徒手体操の練習だけ、3学期もバスケットボールのルールの勉強だけであった生徒たちは、待ちに待った実技が嬉しかった。

「ほいじゃあ、もう1回、順番にドリブルして来い!」
「ええー?」

生徒たちは、唖然とした。いよいよ試合だと思っていたのだ。

「なんならあ!?ええけえ、もう1回、ドリブルせえ!」

仕方なく、生徒たちはまた、5人ずつ、ドリブルでコートを往復する。

「ふー」

少し息が切れてくる。ようやく全員が2回目のドリブルを終える。

「よーし!ドリブルがバスケットボールの基本じゃけえのお」
「……」

生徒たちは、無言である。

「ほいじゃけえ、また、順番にドリブルして来い!」
「えええええーーーー!」

無言であった生徒たちが、叫ぶ。

「(やっぱり、パンヤ先生だ。普通に済むはずがないんだ)」

エヴァンジェリスト少年だけは、冷静にパンヤ先生を分析していた。

「(今日、多分、試合はない)」

エヴァンジェリスト少年の読み通り、その日の体育の授業は、ひたすらドリブルの練習をしただけで終った。

「せんせえ、試合させてえや」

とい生徒たちの願いを受け容れるパンヤ先生ではなかったのだ。

「お前ら、分かっとらん!バスケットボールの基本は、ドリブルじゃ」

エヴァンジェリスト少年の『ミドリチュー』1年の体育は、こうして、徒手体操の練習とバスケットボールのルールの勉強(1時間だけドリブルの練習)だけで終わった。パンヤ先生に翻弄された1年であった。



しかし、その後も、エヴァンジェリスト少年は、パンヤ先生に翻弄されるのであった。


(続く)


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