2019年10月27日日曜日

ハブテン少年[その73]




『少年』は、その年(1967年)、高見山が初の外国人関取になったものの、好きであった大相撲を実際に見に行ったことはなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「?」

風は、『クッキー』子さんであった。ススキの原でエヴァンジェリスト少年が顔に受けた風は、振り向いた『クッキー』子さんであった。『隠れんぼ』で、鬼となったエヴァンジェリスト少年に見つかり逃げたものの、追いつかれ、肩から背中にかけた辺りをタッチされたのだ。

「?」

しかし、タッチされたから振り向いたのではなかった。何か、

「んぐっ!」

という音のような、声のようなものが聞こえたような気がしたのだ。

「……..!」

振り向いたそこには、固まったようになっているエヴァンジェリスト少年がいた。

「?」

立ちすくんだまま、エヴァンジェリスト少年は、心の中で『妻』と決めた女の子が振り向いた風が運んだ匂いに鼻腔を広げ、手は、今タッチした『妻』の体のそれまで感じたことのない柔らかさに、呆然と開いたままとなっていた。

「?」

『クッキー』子さんは、『夫』に何が起きているか理解できていなかったが、何かが起きていることを本能的に感じ取り、頬をほのかにピンクに染めた。それが、新たな匂いを発生させ、エヴァンジェリスト少年の鼻まで達した。

「んぐっ!」

少年も、所謂、『大人への階段』を登り始めていたのだ。そして、その階段もある種の臭いを発生させ、それが『クッキー』子さんの鼻を襲った。



「!」

(続く)



0 件のコメント:

コメントを投稿