2019年10月20日日曜日

ハブテン少年[その66]




『少年』は、その年(1967年)に『建国記念の日』という祝日ができ、学校が休みとなる日が増えたことは喜んだものの、その制定の背景らしきものは子供ながらも疑問の残るものであったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「眼があったんだ」

広島市翠町の自宅の子ども部屋でエヴァンジェリスト少年は、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の1年で同じクラスの友人であるエトワール君に告白した。その日は、土曜日で、エトワール君が、遊びに来ていたのだ。

「エヴァ君、ボクも昨日、眼があったけえ」

二人は、それぞれ自分の好きな子を告白しあっていた。そして、その好きな女の子と『眼があった』(だから、あの子もボクのこと好きなんだろう)と云いあうのは、その日が初めてではなく、ほぼ毎日、そう云いあっていたのだ。まだまだ子どもであった。まだ、中学生の『恋』なんて、その程度のものでしかなかった時代であった。

「(あの子のどこがいいんだろう?)」

正直なところ、エヴァンジェリスト少年は、エトワール君の好きな女の子のどこがいいのか、分らなかった。ブスではなかったが、ややふくよかな体型で、自分の趣味ではなかった。体型の問題ではなく、その時のエヴァンジェリスト少年には、『クッキー』子さん以外、眼中になかったのである。


「(でも、あの子は、『クッキー』子さんの友だちなんだ。だから、いい子なんだ。エト君、良かったね)」

何がいいのか、よく分らないが、確かにエトワール君の好きな女の子は、『クッキー』子さんの一番の友だちであるようだった。丁度、エヴァンジェリスト少年とエトワール君が学校でツルンデいるように、『クッキー』子さんとエトワール君の好きな女の子もツルンデいた。

「(エト君は、ボクの『妻』の友だちの大事な人なんだ。だから、ボクもエト君と仲良くしないとなあ)」

エヴァンジェリスト少年の妄想は、なんだか打算的であった。しかし、2人の友だち同士の男子生徒のそれぞれ好きな女子生徒2人も友だち同士であるという妄想は、実は妄想ではなかったのだ。


(続く)



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