『少年』は、その年(1967年)に命名された『イタイイタイ病』が公害であることは知っていたものの、妙な名前だと思ったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その67]の続き)
「あ、エトワール君もいたん?」
と、エトワール君の好きな女の子が声を発したが、その声は、エヴァンジェリスト少年の耳には入って来なかった。
「(『クッキー』子さん……)」
そうだ、『クッキー』子さんがそこにいた。広島市翠町のエヴァンジェリスト少年の自宅の門の前にいたのは、エトワール君の好きな女の子だけではなく、その斜め後ろに俯いて、そして、少し身を捩るように立つ美少女がいた。エヴァンジェリスト少年か心の中で勝手に『妻』と決めた女性である。
「『クッキー』子ちゃん、こっち来んさいや」
エトワール君の好きな女の子が促すが、『クッキー』子さんは更に、身を捩らせ、後ずさりする。
「『クッキー』子さんが、行こう、云うたんよ」
エトワール君の好きな女の子が、悪戯っぽい笑顔で告げる。
「違うよー!」
『クッキー』子さんが、俯いていた顔を上げ、抗議する。
「云うたじゃないねえ」
「云わないよー!」
「エヴァ君ちに行こう云うたんよお」
「やめてえー!」
『クッキー』子さんが、エトワール君の好きな女の子を戯れるように叩く。しかし、なんだかクッキー』子さんは嬉しそうだ。
(続く)
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