『少年』は、その年(1967年)、新清水トンネルが開通したことに興味を持ったものの、それがどこにあろうと一生そのトンネルを通ることはないだろうと思ったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その75]の続き)
「エヴァ君、隠れるで」
その日、エヴァンジェリスト少年は、自宅で、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)1年の同じクラスの友人エトワール君と遊んでいる時、そこにやって来た『クッキー』子さんとエトワール君の好きな女の子と、近所の空き地とススキの原で『隠れんぼ』をしていた。
「うん」
最初の鬼は、エヴァンジェリスト少年であったが、心の『妻』である『クッキー』子さんを見つけ、逃げる『妻』にタッチし、次は、『妻』が鬼となり、今度は、自分が隠れる番となっていたが、股間に生じた『異変』の為に体を動かすことが困難となっていた。
「どしたん?」
エトワール君は、エヴァンジェリスト少年の『異変』に気付かない。大人になり始めた『妻』の体の柔らかさと『妻』が放つ匂いが、少年に『異変』を生じさせていることに、エトワール君は気付かない。
「もうーいいかい?」
『クッキー』子さんの声が、エヴァンジェリスト少年の耳に入り、耳管を通り、喉を下り、胴を下に通り抜け、体のあるところまで達した。
「んぐっ!........ああ…….」
その後、どのようにして隠れ、誰が見つり次の鬼となり、また、自分がどのようにして隠れ、誰が見つかり次の鬼となっていったのか、自分はまた、『妻』の柔らかさを感じたのか、『妻』の匂いに気を失いかけたのか、エヴァンジェリスト少年は覚えていない。
「んぐっ!」
という『異変』の記憶だけはあった。少女の体が大人になりかけていたように、少年も『大人への階段』を登り始めていたが、まだまだ少年と少女とであった。
それがその当時の(1967年頃の)中学生の恋であった。
今時の(2019年頃の)中学生であったなら、『クッキー』子さんが、彼女の友人にしてエトワール君の好きな女の子と一緒に、自宅まで遊びに来た時、『隠れんぼ』なんかしなかったであろう。
「ウチに入ってよ」
と云ったであろう。親も兄弟もその時、家にはいなかった。そして、
「んぐっぐっー!」
と一気に大人への階段を登りつめたであろう。しかし、エヴァンジェリスト少年と『クッキー』子さんは、そして、エトワール君と彼の好きな女の子は、まだまだ子どもであったのだ。
(続く)
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