『少年』は、その年(1968年)、猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・タイガース』が唄う『僕のマリー』という曲のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その108]の続き)
「どうなるのかしら?」
きっと彼女はそう思っていたであろう。
「あの人、どうして、『答』を訊きに来ないの?!」
『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)1年生の『パルファン』子は、もどかしくて、授業中も窓際の自分の席から、校庭に『彼』の姿を追っていたかもしれない。だって……
「ボクと付き合ってくれないか?!」
と云った上級生は、その後、何も云って来ないのだ。自分は、
「….考えます」
と答えたのだ。
「ボクと付き合ってくれない?!」
と云った2年生の男子生徒は、校内で顔を合わせても、じっと凝視めてくるだけだ。
「どうしてなの?」
とは思っても、凝視めてもらうだけでも幸せであったかもしれない。
「皆の憧れの先輩が、アタシに交際を申し込んできたんだわ」
その事実だけでも幸せであったかもしれない。それに……
「付き合うって、どんなことをするのかしら?」
『パルファン』子さんに交際を申し込んだエヴァンジェリスト少年が、今時の(2019年頃の)中学生とは違い無垢であったように、『パルファン』子さんもまた、今時の(2019年頃の)中学生とは違い無垢であったはずなのだ。
「付き合うって、隠れんぼをするのかしら?2人だけで隠れんぼをするのかしら?友だちを誘うのかなあ?」
隠れんぼも楽しいとは思うが、エヴァンジェリスト少年の眼が望んでいたのはそれではないことは、分っていたであろう。
「2人でどこかに出掛けるのかしら?でも、どこに行くの?翠町公園かしら?公園に行って何をするの?滑り台?ブランコ?」
いや、そんなことでは、エヴァンジェリスト少年は、きっと我慢はできない自と本能的に悟っていたであろう。しかし、同じように『付き合い』の中身について考えていたエヴァンジェリスト少年が、
「(ウチに入れるのか?平日は、夕方まではボク以外はウチに誰もいない。『パルファン』子さんのウチに行くのか?彼女のウチにも平日、夕方までは家族はいないのか?)」
と、妄想を膨らませていたことまでは知らなかったであろう。
「(家族がいなかったらどうなんだ?いないと、できるかもしれない。何が?少なくともキスは…..ああ、いいのか!?中学生がいいのか、そんなことをして!?」
と、ましてや、妄想以外のものも膨らませていたことは、知りようもなかったはずだ。
(続く)
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