2019年12月20日金曜日

ハブテン少年[その125]




『少年』は、当時(1967-1969年頃)、『ザ・タイガース』と並んで猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・スパイダース』のメンバーである『かまやつひろし』が何故、『ムッシュ』なのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「カモーン、ギブアップ!?」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の音楽室の入り口前のスペースで、ジャスティス君を、その日もコブラ・ツイストで捻りあげていた。

「うっ!」

ジャスティス君は、歯を食いしばる。

「カモーン!カモーン!」

エヴァンジェリスト少年は、更に捻りあげる。

「ノー!ノー、ノー、ノー!」

ジャスティス君は、頑張る。

「(いいぞ、いいぞ!その調子)」

友人が簡単にギブアップしないことが嬉しい。

「(姿を見せてくれ!)」

エヴァンジェリスト少年の視線は、窓の向こう、本校舎の教室に向っている。姿はまだ見えないのに、既に『異変』が生じ始めている。

「(クラブが始まる前にと思って、早めに来たんだから)」

あの『肉感的』な少女は、クラブ活動でバレーボールをしていることが分ったのだ。だから、自分の授業が終ると、早々に音楽室まで来たのだ。

「早くおいでよ」

ジャスティス君も誘っておいた。しかし、ブラスバンドの練習をしようとしたのではなかった。ジャスティス君も、そのことは分っていた。友人が、好きでサックスを吹いているのではないことを知っていたからだ。

「(また、コブラ.ツイストかあ….)」

ジャスティス君の想像通り、音楽室に行くなり、エヴァンジェリスト少年に音楽室前のスペースに連れて行かれ、

「カモーン!カモーン!」

と、コブラ.ツイストをかけられた。しかし、ジャスティス君は、知らなかった、エヴァンジェリスト少年の真意を。コブラ.ツイスト極めがいつもより心持ち弱いとは思った。そして、自分の臀部に若干の違和感を感じたが、まさか、


「(まだかなあ…..)」

と、プロレス以上に関心があるものが、窓の向こうにあるとは知らず、

「ノー!ノー、ノー、ノー!」

と、ジャスティス君は、友人のプロレスに付き合っていたのだ。


(続く)




0 件のコメント:

コメントを投稿