2019年12月5日木曜日

ハブテン少年[その112]




『少年』は、その年(1969年)、猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・タイガース』のボーカルの沢田研二のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「(ボクは、断った)」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)2年生のエヴァンジェリスト少年は、そう、自らの意思で断ったのだ。

「キミがするといいと思うんだけどなあ」

と、担任の『オーカクマク』先生に勧められた生徒会長になることを、自らの意思で断ったのだ。

「(お母ちゃんに云わんといけん)」

と思ったが、

「(絶対、『あんたあ、やりんさい!』と云う)」

と、母親に相談した結果は眼に見えていた。しかし、生徒会長になることには全く興味はなかった。

「(ボクは、そんなにキレイな人間ではないんだ)」


生徒会長って、清廉潔白な人間がするものと思っていた。

「(ボクは、このところ、『んぐっ!』ばかりしているんだ)」

と、股間を抑える。エヴァンジェリスト少年は、『己を見る』少年であった。

「(『ミドリチュー』の生徒のみんなのことなんか、どうでもいいんだ)」

と、視線は遠くに向う。

「(ああ、『パルファン』子!)」

そう、『パルファン』子さんのことしか、頭にはなかった。

「(ボクは、お母ちゃんに相談もせず、行動したんだ)」

と、胸を張る。

「ボクと付き合ってくれないか?!」

と、下校途中の1学年下の女子生徒『パルファン』子さんを追いかけ、告白したのだ。自分の意志で!正しくは、自分でも止められぬ自分の中の何かに突き動かされて、そんな言動をとったのであったが…….


(続く)



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