2019年12月22日日曜日

ハブテン少年[その126]




『少年』は、当時(1967-1969年頃)、『ザ・タイガース』と並んで猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・スパイダース』のメンバーである『堺正章』が何故、父親の『堺駿二』のようにコメディアンにならなかったのかと思ったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「(いいぞ、いいぞ!その調子)」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の音楽室の入り口前のスペースで、友人で同じブラスバンド部(吹奏楽部)のジャスティス君にコブラ・ツイストをかけるものの、友人が簡単にギブアップしないことが嬉しいのだ。

「カモーン!カモーン!」

エヴァンジェリスト少年は、更に捻りあげるが、簡単にギブアップを取れないことにプロレスの醍醐味を感じている訳ではなかった。

「(姿を見せてくれ!)」

エヴァンジェリスト少年の視線は、窓の向こう、本校舎の教室に向っている。

「(もう、バレーボール部の練習に行っちゃたのかなあ?)」



ショートカットの髪型で浅黒い肌の少女、そう、あの『肉感的』な少女を窓の向こうに探しているのだ。姿を見るまでは、そのまま窓の向こうを見ていたい。

「ノー!ノー、ノー、ノー!」

そうとは知らないジャスティス君は、友人のプロレスに付き合っている。

「カモーン、ギブアップ!?」

ギブアップされないよう、ほどほどに締める。その時……

「(あ!)」

反射的に体を反らし、コブラ・ツイストがきつく締まった。

「う、ううーっ!」

思わずジャスティス君は、呻いた。

「(んぐっ!)」

エヴァンジェリスト少年の視線は、窓の向こう、本校舎の教室に、そこに姿を見せた少女に固定された。


(続く)



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