2019年12月30日月曜日

ハブテン少年[その134]




『少年』は、当時(1967-1969年頃)、人気となっていたグループ・サウンズの一つである『ザ・テンプターズ』のヒット曲『エメラルドの伝説』という曲のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「特訓してくれるんじゃと」

ハハ・エヴァンジェリストは、自分の末息子であるエヴァンジェリスト少年に、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)体育教師であるパンヤ先生から聞いてきたことを説明する。

「臨海学校が始まる前に、助手を集めて、大学から水泳の先生が来て、特訓してくれるんじゃと」

エヴァンジェリスト少年に1年生の臨海学校の助手をするように云ってきたことの断りを入れに云ったはずの母親であったが、逆にパンヤ先生に説得されて帰ってきたのだ。

「あんたにゃあ、指導力があるけえ、助手に向いとるんじゃと。やりんさい」
「でもお……」
「お母ちゃんもそう思うんよ。あんたあ、小学校の時は学級委員しとったし、中学でも級長やっとるけえ」
「(まあ、確かに、2年生の時に、オーカクマク先生から、生徒会長になるように云われたこともあるけどお……)」




「あんたあ、臨海学校の助手やりんさいや。特訓もしてくれるんじゃけえ」
「(そうかあ、特訓かあ……)」

特訓は嫌だったが、勉強も他の殆ど何もかも良くできるのに、唯一、水泳だけが苦手であったが(実際には、ブラスバンドで吹くサックスも得手とは言い難かったが、そちらは少し事情が変ってきていたのだ)、これを機に苦手克服となるなら、それもいいかも、とついつい思ってしまった。



だから、気付いた時には、

「うぷっ!」

『ミドリチュー』のプールで、危うく水を飲みそうになっていた。


(続く)



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