2019年12月8日日曜日

ハブテン少年[その115]




『少年』は、その年(1969年)、猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・タイガース』のドラム担当の瞳みのるが、どうして『ピー』であるのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「ペラペーラーッララーッ」

音楽室の中からは、トランペットの練習の音が聞こえる。

「ええ、ええーい!ギブアップ?ギブアップ?」

と、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の音楽室の入り口前のスペースで、ジャスティス君が、友人で同じブラスバンド部(吹奏楽部)のエヴァンジェリスト少年をコブラ・ツイストで締め上げ続ける。

「ノー、ノー、ノー、ノーノーノー、ノー!ノー!」

苦痛に歪んだ顔にどこか満悦感を浮かべているように見えるエヴァンジェリスト少年は、『悪役外国人レスラー』になった気分でいる。当時(1969年頃)の日本のプロレスは、『日本人』対『悪役外国人』という構図であった。

「ポロポーッポポポーポーッ」

音楽室の中からは、クラリネットの練習の音が聞こえる。

「カモーン!カモーン!」

ジャスティス君は、先にコブラ・ツイストをかけてきたエヴァンジェリスト少年に倣った表現を使う。

「ノー、ノーノーノー、ノー!ノー!」

『悪役外国人レスラー』だが、強いのだ。簡単にギブアップをする訳にはいかない。

「カモーン、ギブアップ!?」

ジャスティス君は、少し本気を出す。

「ノー、ノー、ノー、ノーノーノー、ノー!ノー!」

エヴァンジェリスト少年は、顔は歪めてみせるが、ますます嬉しそうだ。

「ドド、ドドドドドンドンドンドーン」

音楽室の中からは、強烈なティムパニの練習の音が聞こえる。それに合わせ、ジャスティス君は、最後のひと捻りを加える。



「ええ、ええーい!ギブアップ?ギブアップ?」


(続く)




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