2019年12月4日水曜日

ハブテン少年[その111]




『少年』は、その年(1968年)、猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・タイガース』が唄う『モナリザの微笑』という曲のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「(ああ、『パルファン』子!)」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の校内で『パルファン』子さんを見かけては、エヴァンジェリスト少年は、心の中で『妻』の名を叫ぶ。

「(待っていてくれ!)」

もどかしかった。まだ稼ぎのない中学生では、直ぐには『結婚』できないことがもどかしかった。

「(『結婚』したら、きっと幸せにするからね)」

と、『結婚』のことを想う度に、

「(んぐっ!)」

と、股間を抑える。そんな少年に『会長』となる気はさらさらなかった。



「やりません」

エヴァンジェリスト少年は、担任の『オーカクマク』先生に断りを入れた。少々烏滸がましい断り方である。

「そうかあ……」

『オーカクマク』先生は、残念そうであった。

「君は生徒会長に向いていると思うんだがなあ」

そうだ。エヴァンジェリスト少年は、生徒会長になることを断ったのだ。正確に云うと、生徒会長選挙に立候補することを断ったのだ。だから、

[生徒会長を]やりません」

は、少々烏滸がましい断り方でああったのだ。

「(ああ、『パルファン』子!)」

『ミドリチュー』2年生の時のエヴァンジェリスト少年は、

「ボクと付き合ってくれないか?!」

と告白した1年生の女子生徒にしか興味はなかったのだ。『オーカクマク』先生に生徒会長になることを勧められるくらいだから、成績も良かったが、その年(1968年)のエヴァンジェリスト少年は、頭脳以上に股間の成長が著しかった。

「(んぐっ!)」


(続く)





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