『少年』は、その年(1969年)、猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・タイガース』のギター担当の森本太郎のニックネームが、『タロー』なのは当り前過ぎないかと思ったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
************************
(ハブテン少年[その116]の続き)
「じゃ、また今度、やろうね」
エヴァンジェリスト少年は、『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の音楽室の入り口前のスペースで、コブラ・ツイストのかけっこをしていた友人にして同じブラスバンド部(吹奏楽部)のジャスティス君が、音楽室に入るのを見送った。
「(卍固めもかけたかったなあ)」
コブラ・ツイストをかけ合った次に、アントニオ猪木の新技をかけようとしたが、ジャスティス君はブラスバンドの練習に戻りたがったのだ。自分と違い、ジャスティス君は、ブラスバンドの練習に熱心であり、トロンボーンが上手くもあることを知っていた。
「(まあ、いいさ)」
と素直に、プロレスごっこを止めることを受け止めたのは、15歳となり、もう幼さから抜け出してきていたからであったが、ただそれだけではなかった。
「(……..)」
独り音楽室の入り口前のスペースに残ったエヴァンジェリスト少年は、そのスペース横の窓の外に、無言で視線を送っていた。
「(ああ、『パルファン』子!)」
見えたのだ。『妻』の姿が見えたのだ。
「(奇跡だ!)」
3年生になり、ブラスバンドの練習をする為、本校舎とは別棟に音楽室に行った時、そう思った。
「(まさかあ!)」
音楽室の入り口前のスペース横の窓の丁度、向こう側、本校舎の教室にその姿を認めたのだ。
「(ああ、『パルファン』子!)」
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿