(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その11]の続き)
「モン・サン・ミシェルみたい、かなあ?」
友人と一緒に江ノ島大橋を渡りながら、エヴァンジェリスト氏が、呟いた。江ノ島は、『日本のモン・サン・ミシェル』と云う人がいることを知っていた。
「ああ?...ああ、まあね」
友人のビエール・トンミー氏は、気のない返事をしたように見えただろう。しかし…
「(妻よ、すまない…)」
ビエール・トンミー氏は、心の中で妻に謝っていたのだ。
「(あの時、ボクは、『みさを』のことを思い出していた)」
妻とは、新婚旅行でフランスに行った。パリ滞在が中心の旅行であったが、有名なモン・サン・ミシェルにも足を伸ばした。
「少し江ノ島に似てるわね」
妻が、モン・サン・ミシェルについてそう云った時、ビエール・トンミー氏は、『みさを』のことを思い出したのだ。
「(あゝ、『みさを』…)」
江ノ島には、勿論、妻とも行ったことがあったが、江ノ島というと何故か、『みさを』のことを思い出すのだ。いや、何故か、ではない。江ノ島に一緒に行った幾人もの女同様、『みさを』との江ノ島行は、楽しいものだった。『みさを』は、他の女たちより快活であったので、楽しくないはずはない。だが、
「(ボクは見た。ボクが視線を彼女から外すと、ふと表情を曇らせることがあった)」
快活さの裏にある『みさを』のその影が、彼女の快活さをより際立たせていたのだろう。そのことで、江ノ島と聞くと、『みさを』を連想させるのだ。ある出来事と共に…..
(続く)
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