(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その18]の続き)
「ここは弁財天だ」
ビエール・トンミー氏が、友人に説明する。『エスカー』の第1区間の終点に着くと、そこには江島神社『邊津宮』があった。
「弁財天、知っってるか?」
ビエール・トンミー氏は、興味なさげに『邊津宮』を見上げるエヴァンジェリスト氏に尋ねた。
「知らなくはない。金の神様か?」
「まあ、金運もあるが、芸事でも学業でも出世でもなんでもご利益があるんだ。縁結びのご利益もあるんだ」
と、その最後の言葉を放ちながら、そこでも『みさを』と写真を撮ったことを思い出した。
「アタシたちに『縁結び』は不要ね。もう、『結ばれてる』ものね、フフっ」
と、腕を抱くようにしてきた『みさを』が云った時、自らの股間が猛烈な『反応』を示したことも思い出した。
「(確かに、ボクたちは、もう『結ばれていた』…)」
腕に当たる『みさを』の胸の感触が蘇る。
「弁財天にお願いすると、給料が上がるのか?」
友人の感傷に気付くこともなく、エヴァンジェリスト氏は、自らの悲惨を訴える。
「再雇用後の最初の給料の手取りは、8万円だったんだ」
幾度も聞いた話なので、ビエール・トンミー氏は、取り合わない。
「マルチに引っ掛かることすらできなかったんだ」
そのことも幾度も友人から直接聞いていたので、ビエール・トンミー氏は、取り合うことはせず、云った。
「あれ、やるか?」
(続く)
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