2020年5月31日日曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その23]






「いい景色を見せてやる」

と云うと、ビエール・トンミー氏は、『エスカー』の第2区間の乗り場を通り過ぎ、その先に向った。

「いい景色を見て仕事を忘れろ」

と、ビエール・トンミー氏が、エヴァンジェリスト氏を連れて行ったのは、展望ウッドデッキだった。

「おおー」

展望ウッドデッキから開けた視界に、エヴァンジェリスト氏は、思わず感嘆した。

「なんだか、心が解放されるような気がするなあ」

手前の樹々の向こうに見えるのは、空と海だ。




「お!?なんだ。あれは?」

エヴァンジェリスト氏が、下の方を指差した。

「んむ?」

ビエール・トンミー氏は、友人が指す方に目を遣った。

「ヨットか?」
「ああ、ヨットハーバーだな」
「うーむ、ボクはまだ小型船舶の免許を取っていないんだ」
「はあ?」

ビエール・トンミー氏は、友人が時々、訳の分からぬことを言い出すのには慣れてはいたが、だからといって、その『訳』が判るものではなかった。

「だから、まだ電話がかかって来ないのかなあ?」


(続く)



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