(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その4]の続き)
「(ええ!ボクは『病人』なのに)」
躰の線を露わにする服を着たOL(多分、OL)を見た自らの体の『反応』に、エヴァンジェリスト氏は戸惑った。
「お、どうした?」
友人がただ黙ったのではないと感じたのか、ビエール・トンミー氏が、片瀬江ノ島行の小田急線の車両に並んで座るエヴァンジェリスト氏に訊いてきた。
「いや…ボクは病人だから」
「おお、そうだ。君は『病人』だ」
ビエール・トンミー氏は、友を心配する者とは思えぬ快活さで話す。
「じゃあ、聞こうじゃないか。君がどうして『病人』となってしまったかを話すんだ」
電車は動き始めていた。
「やっぱりアイツのせいか?」
エヴァンジェリスト氏は、友人には、事前にiMessageである程度の事情は説明しておいたが、『病人』となるに至った全容を知らせてはいなかった。
「あのヘッドセット野郎のせいか?」
ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏から、半年前に彼の上司となった室長の酷さを日頃、聞かされていたのだ。そして、その上司は、仕事中、ヘッドセットをしていたのだ。
「しかし、それにしても変な奴だ」
友人が病気となった経緯を聞こうとしながらも、ビエール・トンミー氏は、友人の妙な上司に興味があるようであった。
(続く)
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