「(持つべきは、友だ。いや…)」
男は、小田急・相模大野駅のホームに所在なげな様子で佇んでいた。
「(持つべきは、アイツだ)」
親が死んでも泣かなかった男の眼が、潤んでいるように見えた。
「(そろそろ来る頃だ)」
午前9:27であった。男は、ホームに貼ってある路線図を見た。
「(どういう経路でここまで来るのだ?)」
男の前後、左右を勤め人たちが行き交う。
「(この時間でもまだ通勤客がいるんだなあ)」
男は、前週の金曜日まで、朝6時過ぎには、自宅を出て、東京西部の郊外の町から都心まで1時間半かけて通勤していた。
「(平日のこんな時間に、こんな格好でいていいのか…)」
男は、ユニクロのトレーナーを着ていた。
「よ!」
頭上から、天使の声が、降りてきた……と、エヴァンジェリスト氏には思えた。
2016年10月18日(火)の朝である。
(続く)
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