2020年5月9日土曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その1]




「(持つべきは、友だ。いや…)」

男は、小田急・相模大野駅のホームに所在なげな様子で佇んでいた。

「(持つべきは、アイツだ)」

親が死んでも泣かなかった男の眼が、潤んでいるように見えた。

「(そろそろ来る頃だ)」

午前9:27であった。男は、ホームに貼ってある路線図を見た。



「(どういう経路でここまで来るのだ?)」

男の前後、左右を勤め人たちが行き交う。

「(この時間でもまだ通勤客がいるんだなあ)」

男は、前週の金曜日まで、朝6時過ぎには、自宅を出て、東京西部の郊外の町から都心まで1時間半かけて通勤していた。

「(平日のこんな時間に、こんな格好でいていいのか…)」

男は、ユニクロのトレーナーを着ていた。

「よ!」

頭上から、天使の声が、降りてきた……と、エヴァンジェリスト氏には思えた。



2016年10月18日(火)の朝である。


(続く)



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