(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その20]の続き)
「どうした?やはり穢れきった心が痛んだのか?『芽の輪』をくぐって清められたか?」
江島神社『邊津宮』にある『芽の輪』をくぐった後、しばらく沈黙して佇む友人に、エヴァンジェリスト氏が揶揄うように訊いた。
「いや、清らかなボクの心がより清らかになり、清々しい気分となったのだ。さあ、行くぞ!」
と、ビエール・トンミー氏は、『邊津宮』を背にして歩き出した。
「お守りかおみくじでも買うか?」
札所前を通りながら、ビエール・トンミー氏が、エヴァンジェリスト氏に訊いた。
「いや、いらない」
エヴァンジェリスト氏は即答した。金のかかることは、兎に角、嫌だったのだ。
「(『みさを』も、いらない、と云った。『ビーちゃんと、もう結ばれてるもん!』と…)」
『みさを』の言葉を思い出し、ビエール・トンミー氏の股間にまた『異変」が生じ、歩が乱れたものの、幸いにもエヴァンジェリスト氏には、それに気付かれなかったが、もっと面倒な質問を受けることになってしまった。
「なんだ、これは?『八坂神社』って」
『邊津宮』を出てほどないところにある小さな社について、エヴァンジェリスト氏が尋ねてきたのだ。
「この『八坂神社』って、京都の八坂神社とはどういう関係なんだ?」
無邪気な質問であった。
「(チクショー!)」
ビエール・トンミー氏は、舌打ちした。『みさを』も、同じ質問をしてきたのだ。
「京都の八坂神社はね。元々は、『祇園社』と云っていたんだ。神仏習合で、ただの神社ではなかったんだ。興福寺とか延暦寺に支配されてたらしい。そもそも『祇園社』と称したのは、『祇園精舎』からきているんだよ。『祇園精舎』って、インドの北部にあったお寺でね、釈迦が説法をした場所なんだよ。だけど、明治になった神仏混淆禁止で名前を『八坂神社』に変えたのさ。でも、その京都の八坂神社とここの八坂神社とは特に関係はないと思うよ」
『みさを』には、そう説明した。
「ビーちゃんって、ホント凄いね。こういうのハクシキって云うの?アタシ、バカだから、ビーちゃんのような人に弱いんだよおー」
と云って、『みさを』は、両手でビエール・トンミー氏の右腕を取り、ぶら下がるようにした。
「おいおい」
と云いながらも、股間は、
「んぐっ!」
していた。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿