2020年5月22日金曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その14]






「あの門はねえ、瑞心門って云うんだけど、竜宮城を模して造ったと云われているんだ」

友人の存在を忘れてはいなかったようで、ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏にそう教えた。江島神社に登る階段の途中に赤い鳥居(朱の鳥居)があり、その先に門があった。

「なーにあの門!竜宮城みたいねえ!」




2人でそこに来た時の『みさを』の言葉を思い出す。

「(今、エヴァの奴に話したのと同じ説明をあの時、『みさを』にも説明した)」

デートにあたって、江ノ島のことは予め研究していたのだ。勉強は、子どもの頃から得意だった。

「アタシが乙姫で、ビーちゃんが浦島太郎ね。ふふ」




『みさを』は、笑った。『みさを』は、ビエール.トンミー氏のことを『ビーちゃん』と呼んでいた。

「あゝ、浦島太郎は、乙姫に首ったけさ!」

ビエール.トンミー氏も、『みさを』に笑顔を返した。

「(あの時、ボクは知らなかった。『みさを』が本当に乙姫であったことを)」

ビエール.トンミー氏のその感傷をエヴァンジェリスト氏の言葉が、打ち砕いた。

「でもおかしくないか?竜宮城ってお伽話の世界のものだろ。実在しないものを模すって変だよなあ」


(続く)



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