(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その13]の続き)
「あの門はねえ、瑞心門って云うんだけど、竜宮城を模して造ったと云われているんだ」
友人の存在を忘れてはいなかったようで、ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏にそう教えた。江島神社に登る階段の途中に赤い鳥居(朱の鳥居)があり、その先に門があった。
「なーにあの門!竜宮城みたいねえ!」
2人でそこに来た時の『みさを』の言葉を思い出す。
「(今、エヴァの奴に話したのと同じ説明をあの時、『みさを』にも説明した)」
デートにあたって、江ノ島のことは予め研究していたのだ。勉強は、子どもの頃から得意だった。
「アタシが乙姫で、ビーちゃんが浦島太郎ね。ふふ」
『みさを』は、笑った。『みさを』は、ビエール.トンミー氏のことを『ビーちゃん』と呼んでいた。
「あゝ、浦島太郎は、乙姫に首ったけさ!」
ビエール.トンミー氏も、『みさを』に笑顔を返した。
「(あの時、ボクは知らなかった。『みさを』が本当に乙姫であったことを)」
ビエール.トンミー氏のその感傷をエヴァンジェリスト氏の言葉が、打ち砕いた。
「でもおかしくないか?竜宮城ってお伽話の世界のものだろ。実在しないものを模すって変だよなあ」
(続く)
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