(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その81]の続き)
「おい、あそこだ」
ビエール・トンミー氏は、鎌倉『海岸通り』の『文学館入口』の交差点を左折して入った住宅街の道の先を指し示した。
「ああ、あの森か?」
そこには、森のような、樹木の生い茂った丘のようなものがあった。そこに、『鎌倉文学館』があるようであった。
「おお、心が、まさに洗われるようだなあ」
エヴァンジェリスト氏が、深呼吸をしながら、言葉を優しく吐き出した。住宅街から坂になった道を登り、左右から樹木に覆われた石畳の道が、右方向に緩やかに上って行く。
「君の心は、洗ってキレイになるのか?」
ビエール・トンミー氏が皮肉を云ったが、エヴァンジェリスト氏は、気にせず、樹木が送る風を受けるように、顔を少し上向けた。
「んぐっ!」
ビエール・トンミー氏の体のある部分が、思わず『反応』した。
「へ?」
エヴァンジェリスト氏が、清々しくなった顔を友人の方に向けた。
「いや、石畳にちょっとつっかえたんだ」
と、ビエール・トンミー氏は、下半身を動かし、『異変』を誤魔化した。
「(チクショー!......どうしてだ!?)」
どうして、『みさを』がここでした表情と同じ表情を62歳の爺さんがするのだ!?どうして、その爺さんに『自分』は『反応』してしまうのだ!?
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿