2020年8月24日月曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その94]






「え?Blog?」

友人のビエール・トンミー氏の思いがけない言葉に、エヴァンジェリスト氏は、思わず訊き返した。そこは、鎌倉文学館の常設展示室であった。ビエール・トンミー氏は、そこにエヴァンジェリスト氏の修士論文や、更には、彼のblogも展示されてしかるべきだ、と云ってきたのだ。

「ああ、『プロの旅人』だ」

ビエール・トンミー氏は、冷静にBlog名を告げた。

「いや、あれは、『プロの旅人』氏のBlogだ」
「ああ、ボクもそう思ってきたが、『プロの旅人』氏って誰だ?」
「うう…ああ…ボクたちの共通の友人だ。皆実高校の1年7ホームで一緒だったじゃないか」
「君がそう云うから、1年7ホームに『プロの旅人』氏もいたように思っていたが、よくよく考えると、そんな奴いたと云う記憶がない」
「『ミスター・メモリー』と云われる程の記憶力を持つ君らしくもない」
「高校の頃だけじゃないぞ。今だって、共通の友人というのに、全然、姿を見せないではないか」
「え?そうかあ?....」

エヴァンジェリスト氏は、何かを誤魔化すかのように、興味もない展示された誰か文豪の生原稿を覗き込んだ。

「君なんだろ?」
「へっ!?」
「『プロの旅人』氏とは、君のことなんだろ?」



「あんなクダラナイBlogは、ボクのものではない。お下劣なアイコラ満載だし」
「クダラナイのはその通りだが、そのお下劣Blogが、ここに展示されるのだ」
「嫌だ!あ!....『プロの旅人』は、ボクのBlogではないが、そもそもBlogが文学館に展示される訳がないだろう」
「いやいや、それがそうではないんだ。君は、世界に名を馳せるのだ」


(続く)


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