(治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その97]の続き)
「そんな、君から褒められるなんて…あ、いや、『プロの旅人』はボクのBlogではないんだけど」
エヴァンジェリスト氏は、鎌倉文学館の常設展示室を歩きながら、頭を掻いた。友人のビエール・トンミー氏が、Blog『プロの旅人』をクダラナイとしながらも、そこに秘められたものを解析し、評価してきたのだ。Blog『プロの旅人』は、多分、エヴァンジェリスト氏のBlogではなかったが。
「実のところ、ボクも、君があんなクダランBlogでノーベル文学賞を受賞するなんて納得がいかんが、選考委員たちが決めるなら仕方あるまい」
ビエール・トンミー氏は、本当に不満げな顔をしながらも続けた。
「君がノーベル文学賞を受賞すると、『プロの旅人』もここに展示されることになるだろう」
「でも、ボクは鎌倉に住んでいる訳ではないし、特に、鎌倉と縁がある訳でもないけど」
「君は今日、ここに来ているではないか。もう君は、鎌倉ゆかりの『文士』、いや、鎌倉ゆかりの『文士』嫌いの将来のノーベル文学賞受賞者なんだ」
「え?今日、ここに来ただけで、鎌倉ゆかりになってしまうのか!」
「ビジネスだよ。ここ鎌倉文学館だって、ノーベル文学賞受賞者の作品を展示したいだろう」
「なるほどねえ」
「『プロの旅人』は幾つかのエピソードが印刷されて展示されるだけはなく、タブレットが置かれ、ネットでアクセスすることもできるようなるだろう」
「やはり『怪人』ものなんかが展示されるのかなあ?」
「展示されるのは、『プロの旅人』だけではないぞ。『E氏の独り芝居』も展示されるし、それからなあ、ボクたちが交換している『iMessage』も展示さることになるだろう」
「ええーっ!『E氏の独り芝居』は非公開だし、それ以上に『iMessage』は、プライベートなものだぞ」
「ノーベル文学賞受賞者にプライベートはもうないのだ」
「いいのか?君の秘密も公になってしまうぞ。君はひた隠しにしているが、君がやはり広島皆実高校の出身だということも明らかになってしまうんだぞ」
「仕方あるまい。それも、ノーベル文学賞受賞者の友人を持った者の宿命であろう」
(続く)
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