2020年8月29日土曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その99]






「古本屋かあ」

エヴァンジェリスト氏が、鎌倉文学館の特別展を見ながら、呟いた。その時(2016年10月)、鎌倉文学館では、特別展「ビブリア古書堂の事件手帖」が開催されていた。エヴァンジェリスト氏とビエール・トンミー氏は、常設展示室から特別展示室に移っていた。

『ビブリア古書堂の事件手帖』って、読んだことがあるのか?」

ビエール・トンミー氏は、意外の感を持った。エヴァンジェリスト氏が、偏読で、石坂洋次郎や遠藤周作、フランソワ・モーリアック等、限られた作家の小説しか読まないことを知っていたからだ。

「ない。興味はない。ドラマだ。『ビブリア古書堂の事件手帖』は、テレビ・ドラマになったことがあるんだ。剛力彩芽が主演していた。AKIRAが相手役だった」
「『あきら』?小林旭か?」
かっぜーに逆らうー♪…いや、違う」




特別展示室でいきなり歌い出したエヴァンジェリスト氏に、他の来館者が、批判の眼差しを向けた。

「君も古いなあ。『あきら』というと、小林旭しか思い浮かばないのか?」
「じゃ、『にしきのあきら』か?」
「♫あーいしてるう♪」
「おい、止めろ!」

他の来館者の眼差しに気付いたビエール・トンミー氏が、肘で友人を突いた。

「君が『にしきのあきら』を持ち出したからだろうに。『にしきのあきら』が、剛力彩芽の相手役をすると思うか!?でも、前田日明でもないぞ。EXILEのAKIRAだ」
「EXILEには興味はないし、よく知らんが、君は、剛力彩芽が好きで、『ビブリア古書堂の事件手帖』のドラマを見たのか?」
「いや、たまたま見るようになっただけだ。でも、ドラマの設定となっている古書店というものには興味はあった」
「おお、君はやはり文学修士様であるなあ」


(続く)



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