「こんなのあったかなあ?」
鎌倉の鶴岡八幡宮の参道である若宮大路の真ん中を歩きながら、エヴァンジェリスト氏が、呟いた。
「はあ、『段葛』を知らんのか?奥さんとの初デートで通らなかったのか?」
友人の無知に、ビエール・トンミー氏は、両目を閉じ、首を左右に振った。
「な、何?『壇ふみ』、か?『壇ふみ』なら知っているぞ」
「巫山戯るな!今、ボクたちが歩いているところが、『段葛』だ」
若宮大路の真ん中には、一段高くなった歩道があった。それが、『段葛』であった。
「遊歩道じゃないのか?」
「ええい、ええい!愚か者めが!畏れ多くも『段葛』は、鶴岡八幡宮の一部、鶴岡八幡宮の私道であるぞ!」
「『段葛』ってどう云う意味だ?源頼朝が、カツラでも被ってここを歩いたのか?」
「一段高くなっているから、『段』だ。そして、葛石を使っていたから『段葛』なんだ」
「え?『カズライシ』って?」
「神社やお寺の建物の縁に使われる長方形の石のことだ」
「おお、さすが『博識大先生』!」
「うっ!」
そうであった。『みさを』と歩いた時にも同じ会話をし、彼女に『段葛』を説明したことを思い出した。
(続く)
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