(疑惑と誘惑の結膜炎[その4]の続き)
「あの爺さん、点眼で体を近づけると臭うのよ。老人臭と汗とが入り混じった独特の臭いよ」
眼科の看護師アグネスは、受付をしている同僚のシゲ代に、今、治療を終えて帰って行った老人のことを語っているようで、それはもう独白と云っていいものであった。
「あら、気付かなかったわ」
「あの臭いを嗅ぐと、ついムラムラ、あっ、いえ、ムカムカしちゃって、ええい、どうだ、って目薬を思いっきり、あの爺さんの眼に刺し入れちゃうの」
「アグネスさん、あなたって、ひょっとして......」
「似てるのよ、あの爺さん。高校時代に私を棄てた男に」
「アグネスさん、やっぱり、あなた、トンミーさんのことを....」
シゲ代は、一人興奮を高めていく同僚が心配になった。
しかし......
「いいのよ、あんな奴、ヒィヒィ云わせてやれば」
アグネスはもう、止まらない。
「でも、アイツ、ヒィヒィ云って悦ぶんだわ。だって、ヘンタイなんだから!」
「アグネスさん.......」
「今度、ヘンタイ野郎のアソコにも目薬をきつ~くさしてやる!」
(おしまい)
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