2020年10月29日木曜日

疑惑と誘惑の結膜炎[その5=最終回]

 


疑惑と誘惑の結膜炎[その4]の続き)



「あの爺さん、点眼で体を近づけると臭うのよ。老人臭と汗とが入り混じった独特の臭いよ」


眼科の看護師アグネスは、受付をしている同僚のシゲ代に、今、治療を終えて帰って行った老人のことを語っているようで、それはもう独白と云っていいものであった。


「あら、気付かなかったわ」

「あの臭いを嗅ぐと、ついムラムラ、あっ、いえ、ムカムカしちゃって、ええい、どうだ、って目薬を思いっきり、あの爺さんの眼に刺し入れちゃうの」

「アグネスさん、あなたって、ひょっとして......」

「似てるのよ、あの爺さん。高校時代に私を棄てた男に」

「アグネスさん、やっぱり、あなた、トンミーさんのことを....」


シゲ代は、一人興奮を高めていく同僚が心配になった。


しかし......


「いいのよ、あんな奴、ヒィヒィ云わせてやれば」


アグネスはもう、止まらない。


「でも、アイツ、ヒィヒィ云って悦ぶんだわ。だって、ヘンタイなんだから!」

「アグネスさん.......」

「今度、ヘンタイ野郎のアソコにも目薬をきつ~くさしてやる!」






(おしまい)




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