「いや、コーヒーでも飲んでいこう」
鎌倉駅前で、ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏にそう云うと、小町通り入口を背にし、鎌倉駅前ロータリーを右に歩道を進んで行った。
「(気持ちを落ち着けたい……)」
その日(2016年10月18日)の最後になって、何故か、『みさを』のいる『店』に行ったと云うあの男の言葉が、耳に響いてきたのだ。
「お前には悪いと思ったけど、こっちもさあ、金払ってんだから、ちゃんと『サービス』はしてもらったぜ」
思い出したくもない大学の同期の男だった。その手の『店』の頻繁に行っていることを公言していり男であった。
「云ってくれたんだよなあ、『おっきいねえ』ってさあ。ふふふ」
男は、『みさを』の客となったと云うのだ。
「(どうして、今になって、あんなことを思い出すのだろう?ああ…)」
日が暮れるにつれ、触れたくなかった記憶が戻り、しかし、暗闇の中、その記憶の時制と今とが曖昧となり、頭痛を感じてきていた。
「『みさを』と行った喫茶店に行くのか?」
その言葉で、少し後ろからエヴァンジェリスト氏が付いてきていることを思い出した。
(続く)
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