2020年10月19日月曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その150]

 


治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その149]の続き)



「おい、大丈夫か?」


エヴァンジェリスト氏が、向いの席に座る友人のビエール・トンミー氏の顔を覗き込んだ。2人は、スターバックス鎌倉店にいた。


「お腹が痛いのか?」


ビエール・トンミー氏は、お腹を抱えるようにして体をくの字にしていたのだ。


「ん?大丈夫だ」


我に返ったビーエル・トンミー氏は、体を起こしながら答えた。実際には、お腹を抱えていたのではなく、股間に両手を当てていたのだ。『店』で『みさを』から『サービス』と受ける自分を想像し、股間に『異変』が生じたのであった。


「ふううん…君の『みさを』病は、相当重いようだな」


両手を外した友人の股間に視線を落としながら、エヴァンジェリスト氏が云った。




「だからあ、『みさを』なんて知らないって!『みさを』なんていなかったんだ!」


それは本当だったのだ。『みさを』は『みさを』ではなかった。『みさを』は、『店』での源氏名で本名ではなかった。


「それにしても君も、色男というか、罪な奴だなあ」


という言葉とは裏腹に、エヴァンジェリスト氏は、友人の顔のシミを凝視めた。


「くどい!云っただろう、『みさを』なんていなかったんだ!」


『くどい!」と云ったところで引く相手ではないことは知っていたが、次の友人の言葉にビエール・トンミー氏は、言葉を詰まらせた。


「……!」



(続く)





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