「おい、大丈夫か?」
エヴァンジェリスト氏が、向いの席に座る友人のビエール・トンミー氏の顔を覗き込んだ。2人は、スターバックス鎌倉店にいた。
「お腹が痛いのか?」
ビエール・トンミー氏は、お腹を抱えるようにして体をくの字にしていたのだ。
「ん?大丈夫だ」
我に返ったビーエル・トンミー氏は、体を起こしながら答えた。実際には、お腹を抱えていたのではなく、股間に両手を当てていたのだ。『店』で『みさを』から『サービス』と受ける自分を想像し、股間に『異変』が生じたのであった。
「ふううん…君の『みさを』病は、相当重いようだな」
両手を外した友人の股間に視線を落としながら、エヴァンジェリスト氏が云った。
「だからあ、『みさを』なんて知らないって!『みさを』なんていなかったんだ!」
それは本当だったのだ。『みさを』は『みさを』ではなかった。『みさを』は、『店』での源氏名で本名ではなかった。
「それにしても君も、色男というか、罪な奴だなあ」
という言葉とは裏腹に、エヴァンジェリスト氏は、友人の顔のシミを凝視めた。
「くどい!云っただろう、『みさを』なんていなかったんだ!」
『くどい!」と云ったところで引く相手ではないことは知っていたが、次の友人の言葉にビエール・トンミー氏は、言葉を詰まらせた。
「……!」
(続く)
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