2020年10月22日木曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その153]

 


治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その152]の続き)



「違う!違う、違う、違うう!そんなはずはないんだ!」


スターバックス鎌倉店で、ビエール・トンミー氏は、あらん限りの声を張り上げた。


「あの頃、まだスターバックスは日本になかったんだ!そうだ、シーキャンドルだってまだできていなかったし、『Eggs'n Things』もまだ日本進出していなかったんだ!」


ビエール・トンミー氏が、『みさを』と江ノ島、鎌倉に来たのは、まだ大学生の頃だったのだ。今、そのことに気付いたのである。


「だから、そんなはずはないんだ!」


だから、それはまだ結婚前のことで、『みさを』とは不倫ではなかったのだ、と云いたかったのだ。


「でも、君は、『みさを』とシーキャンドルにも『Eggs'n Things』にも、ここスターバックスにも来たんだ。そして、その後…」


お下劣なエヴァンジェリスト氏の口が開き、ビエール・トンミー氏は、金属をかぶせた歯だらけの友人のその口に襲われ、吸い込まれていくのを感じた。




「違う!違う、違う、違うう!そんなはずはないんだあああああ!」


体が回転し、落ちていった。



(続く)



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