2020年10月30日金曜日

バスローブの男[その1]

 


「あら、アータ、洗濯ならアタシがするわよ」


マダム・トンミーは、洗濯機の前に佇む夫の背に声を掛けた。




「え!?」


夫は、白のバスローブを手にしたまま、振り向いた。


「バスローブを洗うの?アタシがするわよ」


妻は、夫のバスローブに手を伸ばした。


「いや、いい!もう、今日の洗濯は済ませんだろ?」


夫は、バスローブを隠すように自らの腹に当て、妻に背中を向けた。


「アータは、洗濯なんかしなくていいのよ」

「ああ、有難う。でもね、ボクは洗濯が好きなんだよ」


ビーエル・トンミー氏のその言葉は、嘘とは云えなかった。



(続く)




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