「まさか君が、奥さんがいるのに『みさを』と付き合っていたなんてなあ」
スターバックス鎌倉店でビエール・トンミー氏に言葉を詰まらせたのは、友人であるエヴァンジェリスト氏の意外な追及であった。
「10歳も若くて美人な奥さんがありながら、『みさを』とイイコトしてたなんて」
ビエール・トンミー氏が言葉を詰まらせたのは、『みさを』とイイコトをしたということが事実に反するからではなかった。
「(か、か、家内がいるのに?!)」
自分には妻がいるのに『みさを』と付き合っていあっという指摘に驚いたのだ。
「(どういうことだ?)」
ビエール・トンミー氏の眼は、向いの席に座るエヴァンジェリスト氏の顔に向いていたが、何も見えていなかった。
「(いや、結婚前のことだ……そのはずだ…)」
と、ビエール・トンミー氏は口を開けたままでいたが、エヴァンジェリスト氏は、構わず言葉を浴びせてきた。
「どう誤魔化したんだ、奥さんに」
「…?」
「江ノ島、鎌倉に『みさを』と来たことさ」
「…?」
「シーキャンドルに手を繋いで上り、なんだったけ、エッグ…あのホットケーキの店で『アーン』でもしたんだろ?」
「(そ、そ、そんなはず…)」
「鎌倉文学館、鎌倉大仏、鶴岡八幡宮と回った後、ここに座ったんだろ?」
「そんなはずない!」
ビエール・トンミー氏は、思わず声を上げていた。
(続く)
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