2020年10月20日火曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その151]

 


治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その150]の続き)



「まさか君が、奥さんがいるのに『みさを』と付き合っていたなんてなあ」


スターバックス鎌倉店でビエール・トンミー氏に言葉を詰まらせたのは、友人であるエヴァンジェリスト氏の意外な追及であった。


「10歳も若くて美人な奥さんがありながら、『みさを』とイイコトしてたなんて」


ビエール・トンミー氏が言葉を詰まらせたのは、『みさを』とイイコトをしたということが事実に反するからではなかった。


「(か、か、家内がいるのに?!)」


自分には妻がいるのに『みさを』と付き合っていあっという指摘に驚いたのだ。


「(どういうことだ?)」


ビエール・トンミー氏の眼は、向いの席に座るエヴァンジェリスト氏の顔に向いていたが、何も見えていなかった。


「(いや、結婚前のことだ……そのはずだ…)」


と、ビエール・トンミー氏は口を開けたままでいたが、エヴァンジェリスト氏は、構わず言葉を浴びせてきた。


「どう誤魔化したんだ、奥さんに」

「…?」

「江ノ島、鎌倉に『みさを』と来たことさ」

「…?」

「シーキャンドルに手を繋いで上り、なんだったけ、エッグ…あのホットケーキの店で『アーン』でもしたんだろ?」

「(そ、そ、そんなはず…)」

「鎌倉文学館、鎌倉大仏、鶴岡八幡宮と回った後、ここに座ったんだろ?」




「そんなはずない!」


ビエール・トンミー氏は、思わず声を上げていた。



(続く)




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