2020年10月10日土曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その141]

 


治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その140]の続き)



「『みさを』って、やっぱりハンカチ大学だったのか?」


鎌倉の若宮大路の、今度は『段葛』ではなく、脇の歩道を鎌倉駅方面に向いながら、エヴァンジェリスト氏が、友人に訊いた。


「君と同じ商学部か?」


返事をしないビエール・トンミー氏に更に訊いた。


「(違う!別の大学だった…)」


エヴァンジェリスト氏に返事はしなかったが、ビエール・トンミー氏は、友人の質問に、『みさを』との出会いを思い出していた。


「(コンパだ)」


ビエール・トンミー氏は、コンパで別の大学の女子学生の『みさを』と出会った。しかし、どこの大学であったかを思い出せない。


「(確か、新宿の居酒屋だった。最初は、正面に座った…)」




初めて『みさを』の顔を見た時に、口を開けたままにしたことを思い出す。


「(時間が経ち、いつの間にか『みさを』が隣に座り、2人だけで話すようになっていた)」


『みさを』の肩が触れ、その内に、『みさを』の太ももが、スカート越しに触れてきた。


「(んぐっ!)」


周囲が煩く、顔を寄せ合うように話し、『みさを』の口臭に鼻を襲われた。


「(んぐっ!んぐっ!)」


アルコール混じりの芳しいのか臭いのか分からぬその口臭が、今、ビエール・トンミー氏の鼻に蘇る。



(続く)




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