2020年10月11日日曜日

治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その142]

 


治療の旅【江ノ島/鎌倉・編】[その141]の続き)



「(んぐっ!んぐっ!んぐっ!)」


鎌倉の若宮大路の脇の歩道を鎌倉駅方面に歩きながら、ビエール・トンミー氏は、一瞬立ち止まり、股間を抑えた。『みさを』との出会いを思い出し、そして、彼女の口臭が蘇り、股間に『異変』が生じたのだ。


「おい、どうした?」


横を歩くエヴァンジェリスト氏が、訊き、視線を友人の股間に落とした。


「いや、なんでもない。ちょっと靴紐が緩んだようだ」


と云うと、股間を隠すように、しゃがんで靴紐を結び直した。




「ふん…また『みさを』のことでも思い出したのかと思った」


エヴァンジェリスト氏は、皮肉な笑みを浮かべた。


「だからあ、『みさを』なんて女、知らないって!」


と、立ち上がったビエール・トンミー氏は、語気強く返した。


「(そうだ。『みさを』は、『みさを』ではなかったんだ)」


再び、鎌倉駅方面に向いながら、ビエール・トンミー氏は、ハンカチ大学の同級生の男の言葉を思い出した。


「いやあ、ビックリしたぜ」



(続く)




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