2021年10月11日月曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その13]

 


(え?バド?)」


と、口の中で呟いた少女がいた。


「(え?『パパ』?」


と、少女の母親も口の中で呟いた。


「2人とも早くいらして」


『赤バス』(帝産広島バス)と『青バス』(広電バス)とを指しながら話す『少年』とその父親に、『少年』の母親が声を掛けた。母親と『少年』の妹は、バスの乗り口前にいた。広島駅前のバス停である。


「バス、出ちゃうわよ」


もう『出ちゃい』そうなそのバスに、少女とその母親はいた。バスの中から、バスに近づいてくる『少年』とその父親とを凝視め、各々に、当時、人気のあったアメリカのテレビ映画『パパは何でも知っている』の長男『バド』と『パパ』のように見えていたのだ。


「(ああような男の子、広島で見たことないけえ)」


女の子にモテモテの『バド』が、ブラウン管から出てきたように少女は思った。




「(東京から来んさったんじゃろうかあ)」


少女の母親もそう思いながら、


「……」


座席についた臀部を少し動かした。


「お母ちゃん、どしたん?」



(続く)




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