2021年10月1日金曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その3]

 


「(確かに、美男子だけどお…)」


と、『少年』の妹は思った。自分の同級生たちや他の学年の女子たちが、兄に憧れているのを知っていたのだ。


「(お兄ちゃんには、みんなの知らない、面白いところもあるわ)」


小学4年生を終えたばかりの妹は、まだ語彙が少なく、『面白い』と表現したが、今なら『滑稽』と表現したであろう。


「(だって、ホント、尺取り虫みたいだったもの)」


『少年』は、『うつぶせ寝』の状態で、腰を上げ下げしているところを妹に見られてしまったのだ。


しかし、妹は、知らなかった。『兄』が『尺取り虫』をしていた頃、これから、引っ越していく広島市のある小学校の体育用具準備室で、


「ウンギリギッキ!ウンギリギッキ!」


と叫びながら、同級生に背後から抱きつき、股間を同級生の臀部に押し当て、立ったままだが、これも『尺取り虫』のように、腰を前後に振っている小学生たちがいたことを。



(参照:【ゲス児童】『くしゃれ緑』な『ウンギリギッキ』(その30)[M-Files No.5 ]





「ええねえ、広島行くん?」


妹は、琴芝小学校の同級生の女の子から、そう羨ましがられた。


「うん、そうだよ」

「広島いうて、大きいんじゃろ?」


と、同級生の女の子は、人差し指を頬に当てた。『大きい』とは、この場合、『都会である』という程の意味であった。小学4年生にとって、『都会』は『大きい』存在なのであった。


「うん、大きいと思うよ」


と答えたものの、ビエール・トンミー少年の妹は、広島がどんな街であるのか知らなかった。今(2021年)のような情報化の進んだ世の中ではなかったのだ。


「パパ、広島って大きいの?」


妹は、特急電車の席でうたた寝をしていた父親に訊いた。



(続く)






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