「あ、森?!」
『少年』は、眼の前に大きな樹々が広がっているのを見、思わず、感嘆の声を漏らした。両親と妹と共に、牛田の新しい『我が家』に向っていたところであった。
「ああ、なかなかだろう。あれは、『浅野山』だ」
という父親の説明に、『少年』は、思わず、
「え?山?あれ、山なの?」
と、叫ぶような声を出してしまった。
「ビエールが、森と思うのも分からんではない。あそこは、『浅野山緑地』ともいうからな」
『少年』の父親は、やはり、『なんでも知っているパパ』であった。
「浅野って、ひょっとして、広島藩の?」
「ああ、そうだ。広島藩の『浅野家』のことだ」
「そうなのお!牛田って、お公家さんの土地だけではなくって、広島の殿様の土地でもあったの?」
「『浅野山緑地』は、殆どが『浅野家』の墓地なんだそうだ」
「ええー!」
「それにな、さっき、ここまで来る途中に、お寺があっただろ?日通寺というんだが、『浅野家』の菩提寺なんだ。つまり、『浅野家』のお寺ということだな」
「牛田って、凄いところなんだね。でも、広島の『浅野家』って….」
(続く)
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