「あの方は、本当にそうされたのですか?」
と、ビエール・トンミー氏がしたことを直接的に表現することを躊躇したビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員は、エヴァンジェリスト氏へのiMessageで、言葉を濁した。
ビエール・トンミー氏が、『野糞』をした後の自分のお尻の始末についてのことであった。
「ああ、そうシチャッたという噂だ」
「新聞紙は、お持ちではなかったのですか?」
「現役のサラリーマンだって、スマートフォンを持つ今時、通勤電車で新聞を読む者も少ないと思うが、まあ、通勤の時、新聞を読むサラリーマンもまだいるかもしれない。だが、アイツはもうリタイアした高等遊民だ。ティシュも新聞紙も普段、持ち歩いてはいなかったんだろう。コーランは持っていたのかもしれんが、君の云う通り、コーランでケツを拭くという不敬はしなかっただろう」
「では、パンツにアレが付いたでしょうねえ」
「それが、パンツだけなら傷は浅かっただろうが、ということらしい」
「ああ、パジャマですね。あの方は、スーパーでも銀行でもどこにでも、パジャマを着てお出掛けになる。パジャマには見えないパジャマですけれど。でも、パンツから滲み出て、着てらしたそのパジャマにもアレが付いたんですね。ちょっと緩めのアレだったのでしょう」
「うーむ……どうやら、パジャマだったら、洗濯も簡単だったらしいんだが」
「え?着ていたのは、パジャマではなかったんですか?まあ、何を履いていたにせよ、いくら愛する夫のモノとはいえ、大の大人、というか、大の老人のアレが付いたものを選択する奥様も大変でしたでしょう」
「いや、奥様は、都合よくもお出掛けだったらしい」
「じゃあ、あの方は、ご自分で洗われたのですか?」
「そりゃ、隣の奥さんは洗ってくれんだろうし、今でもアイツのことを出会った時のままの『紳士』だと思っている奥様には、アイツも、間違っても、その失態は知られたくはなかったようだ」
(続く)
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