「文字のメッセージ交換で、読みしか分からんフリをすることはなかろう。『ガゴウ』は、ああ、アイツの『世捨て人』としての名前、『雅号』だ」
というiMessageで、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を取材対象とする特派員に、自らが友人のビエール・トンミー氏の為に用意してあるという『雅号』なるものについて説明した。
「え?あの方は、世捨て人』なのですか?」
「いや、まだだ。しかし、アイツは、『高等遊民』と自認しておる。『高等遊民』と『世捨て人』とは紙一重だ。遠からず、『世捨て人』宣言をするのではないか、ともっぱらの噂だ。君もアイツを取材対象とする特派員なら、そのくらいの知識は持っとらんとあかんぞ」
「で、なんていう『雅号』なんです、あの方のは?」
「ふふ、ワシとアイツとの共通の友人にして、『世捨て人』の男の『雅号』が、『運沈入穴』だから….」
「なんですか、それは?どう読むのですか?」
「『ウンチン・ニュ~ケツ』だ」
「げっ!なんちゅう汚い名前ですかあ!『ウンチン』が、『ニュ~』と『ケツ』ですかあ?!」
「君が云うと、汚く聞こえるなあ」
「でも漢字では、『ケツ(穴)』から出るではなく、『ケツ(穴)』に『入る』なんですね。それって、理解不能というか、もし、出るではなく、本当に『入る』だとすると、ますます汚く、想像するだけでモドシてしまいそうになっちゃいます」
「おいおい、ワシとのメッセージ交換の最中にモドスのは止めてくれ」
「モドシたところで、iMessageでは、画像でも添付しない限り、見えやしないでしょうし、胃液の混じった臭いなんて、アナタのところには届きませんよ、ご心配なく」
「いや、IT技術は猛烈に進化しているからなあ。ひょっとしたら、iMessageの隠し機能に、『臭い伝達』があるかもしれんからなあ」
「ふん、クダラナイ!まあ、なんにせよ、その『運沈入穴』という世捨て人は、世捨て人とは名ばかりのロクでもない人なんでしょう」
「な~んだ。君は、『運沈入穴』のことを知っていたのか」
「え?」
「確かに、『運沈入穴』は、オゲレツなワシと変態のビエールの共通の友人だから、オゲレツな変態で、風貌は『プロの旅人』氏に酷似しているとも云われておる」
「ああ、そういうことですかあ…」
「何が『そういうこと』なんだ?」
「で、要するに、どうなんです?何なんです?」
(続く)
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