「じゃ、後でのお」
『ハナタバ』少年は、同級生2人に、片手を上げ、広島弁でそう云うと、別れ道を家路に就いた。
1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た、1年X組の男子生徒3人であった。
「アソコでの、ふふ」
『ボッキ』少年は、『ハナタバ』少年の背に、広島弁で含み笑いをした。
「うん、『秘密の入口』だね」
ビエール少年は、小声の『標準語』で返した。
「『秘密』?なんねえ、『秘密』いうて?」
ビエール少年と『ボッキ』少年の背後から若い女性の声が、男子生徒たちの会話に割り込んできた。
「え?」
と、振り向いたビエール少年の左肘が、何か柔らかいものに当った。
「ん、んふっ」
ビエール少年の真後ろに、それも間近に少女『トシエ』がいた。
「ええーっ!?」
ビエール少年は、思わず眼を見開き、大きく高い声を発した。それは、少女『トシエ』がいたからであり、また、自分の肘が少女『トシエ』のソコに当ったことを知ったからであった。
「あ、ごめ…」
「ええんよ」
「いや、驚いたからで…」
と、云いながらも、ビエール少年の眼は、彼が今、左肘で柔らかさを感じた少女『トシエ』のソノ部分に落ちていた。
「構わんけえ」
少女『トシエ』は、歯に噛む。
「ち、違うんだ…」
「それより何なん?」
「え?」
(続く)
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