2022年10月18日火曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その299]

 


「奥さん?」


と、『ボッキ』少年は、怪訝な顔で少女『トシエ』の顔を覗き込んだ。


1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求していたところ、遠りがかった赤い髪の若い外国人女性が、『バド』と呼ばれているビエール少年に対して、アメリカ人なのかと訊き、ビエール少年と英語での会話を交わしたのを見て、『ボッキ』少年と少女『トシエ』が、ビエール少年の英語力に感嘆していたことから、ビエール少年が見ているというNHK教育テレビの『テレビ英語会話』話題へとなっていたが、少女『トシエ』が、奥さんが英語喋れない訳にはいかないから、自分も『テレビ英語会話』見るようにすると云い出したのであった。


「いつか『ユーベ』に行くことになるかもしれんけえ」


少女『トシエ』は、身を捩りながら、そう云った。


「『ユーベ』?それって。どこにあるん?」

「アメリカに決っとるじゃないねえ」

「アメリカのどこなんや?」

「知らん」

「どうしてそこに行くんや?」

「そりゃ、『あたり前田』じゃろうがいねえ」

「クラッカー作りに行くんか?」

「クラッカーも作るかもしれんけど、『ホス』なんとかいうんを作るかもしれんけえ」

「え?『ホース』?『ホース』作るんかあ。アメリカで?」

「ふああ~ん???なんで、ウチが『ホース』作らんといけんのん?!そりゃ、こっちと違うて庭が広うて、芝生があって花もようけえあって綺麗じゃろうけえ、『ホース』で水撒きはせんといけん思うんよ。じゃけど、『ホース』は、ウチ、作らんけえ」




「じゃけど、ジブンが『ホース』云うたじゃろうがあ」

「『ホース』じゃのうて、ホス』なんとかいうんよ。『アーメン』の時に食べるもんじゃけえ」



(続く)





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