「(多分、英語)デモ、コノショウジョガ、アナタヲ『バド』ト、ヨンデタワ」
と、赤い髪の若い外国人女性は、少女『トシエ』をさしながら、そうビエール少年に質問をしてきた。
1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求してきていたが、そこに赤い髪の若い外国人女性が割り入ってきたのだ。
「(多分、英語)ソレニ、アナタ、ワタシノオトートニ、ニテルワ」
「(拙い英語)ブラザー?」
「(多分、英語)ソウ、オトートモ、『バド』トヨバレテルノ。ワタシハ、『ベティ』ヨ」
「(拙い英語)オー、ユー・アー、『ベティ』!バット、アイ・ム・ナット・『バド』。アイ・ム・『ビエール』」
と、ビエール少年は、自らの名を赤い髪の若い外国人女性に告げたところ、赤い髪の若い外国人女性は両手を顔まで上げ、声と共に、ジェスチャーで驚きを示した。
「(多分、英語)オウ!『ビエール』!?アナタ、フランス・ジン、ダッタノネ!デモ、アナタノエイゴ、トテモ、クリアネ!ソレニ、イギリス・ジンノ『ジェームズ・ボンド』ニ、ニテイルワ」
「(拙い英語)オオ!」
というビエール少年の驚きの声は、赤い髪の女性に英語を完全に理解した訳ではなかったものの、宇部時代にも似ているとよく云われた『ジェームズ・ボンド』の名が、外国人女性からも出てきたことによるものであった。
「(多分、英語)ワタシ、カンダヤマノ『ユースホステル』ニイッテ、ナンニチカ、トマルノ。マタ、アナタニ、アイタイワ、『バド』、オオ、『ビエール』、オオ、『ミスター・ボンド』。ンフッ」
と、赤い髪の若い女性は、ビエール少年にウインクすると、ビエール少年の両肩を持ち、自らの体に引き寄せ、ハグをした。
(続く)
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