2022年10月7日金曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その288]

 


「(んぐっ!)」


ビエール少年は、何かを隠すように自らの体の前に持ってきていた鞄を、衝撃で落としてしまっていた。突然、どこかからか大きな声がしたかと思うと、少女『トシエ』の体が、ぶつかってきたのだ。


1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求してきたのを、『ボッキ』少年は、『高橋圭三』のセリフ『事実は小説より奇なりと申しまして』を持ち出し、話をはぐらかせようとしたことから、話は、詩人『バイロン』の長編叙事詩『ドン・ジュアン』へと派生していっていたが、少女『トシエ』は、ビエール少年に外国人の友人がいると勘違いしていたところであった。


「え?!」


少女『トシエ』は、体の下半分に何か固い物が当った感覚があり、視線を自らの体とビエール少年の体の間に落とした。


「あ、いや、あ、ああ、こ、っこ、これは違ってて…」


ビエール少年は、自分でも、ソレが何であるのか、いや、ソレがどうしてソウなったのか、分らないものの、自らの動揺を隠すことができなかった。


「え?え、ええ、ええんよ」


少女『トシエ』の方も、恥じらいながらも、ビエール少年にぶつけたまま、相撲で四つに組んだような状態になっていた自分の体を少年から離そうとはしなかった。が…




「オオ、『バド』!?」


という再度の大きな声と共に、少女『トシエ』は肩を何か掴まれ、体をビエール少年から引き離された。


「へ?え?な、なん?」


という少女『トシエ』の叫びを無視して、大きな声が、言葉を続けた。


「(多分、英語)オオ、アナタハ、『バド』?」



(続く)




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