「へええ、ラーメンに乗せて食べるんか、その『ホス』なんとかいうんは」
と、少女『トシエ』に質問した『ボッキ』少年の顔は、間抜け顔になっていた。
1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求していたところ、遠りがかった赤い髪の若い外国人女性が、『バド』と呼ばれているビエール少年に対して、アメリカ人なのかと訊き、ビエール少年と英語での会話を交わしたのを見て、『ボッキ』少年と少女『トシエ』が、ビエール少年の英語力に感嘆していたことから、ビエール少年が見ているというNHK教育テレビの『テレビ英語会話』話題へとなっていた。そして、更に、少女『トシエ』が、奥さんが英語喋れない訳にはいかないから、自分も『テレビ英語会話』見るようにすると云い出し、少女の妄想は、ビエール少年の妻となった自分が、『整体拝受』の際の『ホスチア』だって作るかもしれない、とまで拡がっていっていたのだ。
「アンタもアタマええ思うとったが、アホじゃねえ。やっぱり『バド』には敵わんのじゃねえ。ラーメンじゃのうて『アーメン』よお」
と、少女『トシエ』は、小学生時代、アタマの良かった『ボッキ』少年に少し好意を抱いた自分を恥じた。
「『アメ』?その『ホス』なんとかいうんは、『アメ』と一緒に食べるん?」
「『アメ』じゃのうて『アーメン』じゃけえ。よう聞きんさいや。『アーメン』は、キリストさんよおね」
「え?『アーメン』は、『栗栖』(くりす)さんなん?翠町に、お母ちゃんの知り合いの『栗栖』さんがおるで。『栗栖』さんが、『アメ』好きなんか?」
「分からんこと云うんもいい加減にしんさいよ。十字架の『キリスト』さんよおね」
「おお!『イエース』!判ったで、『イエース』の『キリスト』じゃの。その『キリスト』が、『アメ』好きじゃったんか?」
どちらかと云えば、優等生タイプの『ボッキ』少年が、珍しくダジャレを云った。
「知らんよおね。ウチ、『キリスト』さんに会うたことないけえ」
「ワシも会うたことないで。ウチは、『ナ~ムア~ミダ~ンブー』じゃけえ」
「え?それ、何の歌?」
と、それまで、『ボッキ』少年と少女『トシエ』の会話をあまり興味なさげに聞くだであったビエール少年が、『ボッキ』少年の聞き慣れない言葉というか歌のようなものに関心を示した。
(続く)
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