「ええー!アンタのお兄ちゃん、『ジジイ放談』見とるん?」
と、少女『トシエ』は、呆れ顔で『ボッキ』少年を見た。
1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求していたところ、遠りがかった赤い髪の若い外国人女性が、『バド』と呼ばれているビエール少年に対して、アメリカ人なのかと訊き、ビエール少年と英語での会話を交わしたのを見て、『ボッキ』少年と少女『トシエ』は、ビエール少年の英語力に感嘆していたが、話は、『時事放談』へと逸れていっていた。
「『オバマ・リトク』とか『ホソカワ・リューゲン』のどこがええん?」
「え?『オバマ』さん?そんな名前の外国人っているのかなあ?『リトク』って名前もあるのかなあ。『ホソカワ』って日本人の名前だから、日系の人なんだろうけど、『リューゲン』みたいな外国人の名前もあるのかなあ?」
『時事放談』は見たこともなく、その知識を殆ど持っていなかった『ボッキ』少年は、『時事放談』を『GGホウダウン』というなんだかよく知らない外国人の出てくるテレビ番組と誤解していた。
また、その時は(1967年4月である)、まだ、『バラク・オバマ』が、米国大統領になる40年以上も前であり(1961年8月生れの『バラク・オバマ』は、その時、まだ6歳になる前であった)、『オバマ』という名前に日本人は誰も馴染みのない時代であった。
「あのね、『オバマ・リトク』って、本当は、『オバマ・トシエ』っていう名前の人なんだ」
と、『ボッキ』少年の混乱を見たビエール少年が、『時事放談』出演者について解説を始めたが、却って混乱を増幅させることになった。
「ええー!?『トシエ』さんが出ていたの?『オバさん』の役で?」
『ボッキ』少年は、不思議なものを見るように少女『トシエ』を見た。
(続く)
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